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さかえ横浜会議|東日本大震災と日本人〜利他と感謝と喜働の心〜

未曾有の事態となった東日本大震災から10年。
みなさんはあのとき、何を思い、今日までどう過ごしてきましたか?
「3.11」それは、さかえ横浜会議発足にも大きく関わる、私たちの心を大きくゆさぶる出来事でした。


2021年5月11日のさかえ横浜会議は、企業リスク研究所代表 白木大五郎さんをお迎えし、風化させてはならない東日本大震災の現実と、リスク管理の視点から見た問題点や課題について講演いただきました。

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◎近年の調査結果から考える

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「私たちはこのことを風化させてはいけないという想いと、『自分の国に誇りがあるか?』」という問いに対する日本と諸外国の若者の答え。これらは、白木先生が今回のテーマを取り上げた理由です。

月刊誌「エコノミスト」によると、日本の子どもや若者の自国に対する誇りは、諸外国と比較して低いようです。日本の将来を担っていく若者たちに語れる「すばらしさ」を、日本人は持っていないのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。
震災時、実は現地での日本人の対応は、世界から絶賛を受けていました。
この事実を伝えていくために、
「日本人のすばらしさを、震災そのものや組織の問題点なども合わせてお伝えしたい」
白木先生の言葉から、会はスタートしました。

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◎東日本大震災をデータと写真で振り返る

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あらためて、東日本大震災の大きさと被害を、データと写真で見ていきましょう。

【地震の規模】
マグニチュード9.0。東日本大震災は、実に世界第4位の規模でした。
宮城県牡鹿半島に設置されている電子基準点「牡鹿」は、地震に伴い東南東方向に約5.3m移動し、約1.2m沈下したことがわかっています。
そして、地震のエネルギーは、阪神大震災の178倍でした。

【避難者と被害】
全国避難者 4万1千名 10年たっても。
膨大な漁船被害、津波浸水は東京山手線内の約7倍

【現地の様子】
白木先生が震災後、被災地入りしたときの様子です。


(白木先生撮影)

白木先生
「避難所にもかけつけ、自衛隊のみなさんの活動やボランティアの方たちの姿勢を一緒に見てきました。2年前に、再度様子を見るために現地に出向いたが、被災地には、まだまだ復興が追い付いていません」

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◎リスクマネジメントの視点から見た東日本大震災

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起こりうる事態に備えることをリスクヘッジ、組織や企業の活動で発生するリスクにおいて対策をとり、緊急事態が起きたときでも迅速に対応をとって被害を最小に押さえていくことを、リスクマネジメントといいます。

リスクマネジメントの視点から考えると、東日本大震災時に対策をとるべき組織の対応は、残念ながらよい流れとはいえない状況でした。

緊急事態発生時の対応とは 本来、
(大惨事をも想定し)高く見積もる → (確認しながら)少しずつゆるめる

…のようにあるべきでした。

東日本大震災時に対する対応は、その真逆をいくものだったのです。
東日本大震災について、リスクマネジメントの視点からみた問題点は、主に次の内容となります。

【被害やリスクに対する考えや対策】
2007年アメリカのIAEAは福島原発を調査していました。日本の環境に合わせた設備とはいえない状況と調査時に指摘されていたにも関わらず、対策がとれていなかった現実があります。
東日本大震災時の福島原発の崩壊は、起こるべくして起こった事態ともいえるのです。

【組織の難点】
国の体制づくりの面では、原発の安全基準策定部署である「原子力安全委員会」が、現場の実態に疎い専門知識集団であった点も、私たちは知るべきです。
日本には、組織としては対策をとるさまざまな組織があり、1,700名にもわたる体制がとられていますが、それぞれ縦割り組織で、責任の所在が不透明なのも事実です。
政府と東電、原子力保安院で情報は錯乱し、とんでくる指示から現場は混乱していました。
停電に関する見込みひとつとっても、長時間の全電源喪失は想定しなかった点、実地訓練をしていなかった点が指摘されています。

【当時のリーダーの問題点】
現場では、元福島原発所長の英断がありました。
一方で、国の組織では方針の迷走 説明、根回し不足などが随所でみられました。これらは、現場力を信頼して任せる勇気と判断の欠如であったといえるでしょう。

では、日本人は判断ができない民族なのでしょうか?
それは違います。
かつて起こった関東大震災後には、政府は復興計画を速やかにたて、対応をしていました。
当時は若い官僚を積極的に採用し、非常時の避難場所や津波対策等もとれていた事実があります。

非常時の対応は、トップのリーダーとその采配次第なのです。
東日本大震災は、「天災でなく人災だ」という声があるなか、事態について誰も責任をとっていません。この事実を、私たちは受け止めて考えていくべきです。

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◎日本人のすばらしさも知り、伝えよう

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「利他の心」で動く
使命感ややりがいがあれば、年齢や経験に関わらずにとるべき行動がとれます。東日本震災、そして震災後には、被災地でNPOや若者のすばらしい行動力、明るい笑顔がみられ、はげまされた人がたくさんいました。

また、避難所では、ゆずりあいの言葉、行動がみられ、世界から絶賛を受けています。
ヤマト運輸では、現地の人のためにドライバー個人が自発的な行動をとりました。会社には事後報告でしたが、それに対して社内ではねぎらいの言葉を受けています。これは、企業がしっかりしているからこそのこと。行動の指針がしっかりしていれば、人は個人レベルで英断ができるのです。

・冷静な行動
・すばらしい精神文化
・勇気ある人々

これが、現地でみられた日本人の行動に対する世界からの評価です。
組織の問題点だけでなく、こうしたすばらしい点も、私たち一人ひとりが把握したいところです。風化させずに語りつぎ、行動し続けていくべきことのひとつといえるでしょう。

「災害は、わすれなくてもやってくる」
先人の忠告に耳を傾け、鎌倉の大仏が屋外にある理由(津波によるもの)を忘れずに、組織はもちろん、私たち個人個人も考え、行動していくことを意識していきましょう。

また、

ほんとうの豊かさとは?
目に見えるものより、見えないものの大切さ
物や資産は失っても、心の絆はなくならない

そんな価値観も、有事が続く今こそ、振り返り大切にしていきたいですね。

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◎トップに問われることは、時代が移っても変わらない

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企業はトップの器で決まる。真のリーダーシップとは?
白木先生が属する鎌倉倫理法人会は、社会法人や個人会員により全国的に活動する組織です。昭和29年創立。目的は倫理の学びと教えを通して人間力を育む活動を続けています。

世界の大地震の2割は日本で発生する。
地震大国ということを忘れず、対策をとっていくべき。

そういった想いから、6月には鎌倉でチャリティーコンサートが開催されます。
奇跡の一本松を使ったTSUNAMIヴァイオリンで リレーをしながらその音色をコンサートとして届ける、すばらしい企画です。ご予定がつく方は、ぜひご参加ください!

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第8回 東日本被災児童支援チャリティコンサート
2021年 6月12日(土) 14:00
鎌倉市生涯学習センターホール

演奏
TSUNAMI バイオリン:石井有子(いしい ありこ)
ボーカル:香坂 優(こうさか ゆう)
ピアノ:須藤信一郎(すどう しんいちろう)

主催:鎌倉市倫理法人会
協力:鎌倉てらこや
後援:鎌倉市・鎌倉市教育委員会・鎌倉市文化協会・さかえ横浜会議

当日の会場鑑賞:2,500円(前売り)
お申し込み▶ https://kamarin.base.ec/items/44430952

後日のオンライン鑑賞:1,000円
お申し込み▶ https://kamakurarinri.blogspot.com/2021/04/blog-post.html?m=1

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◎ディスカッション

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白木先生の講演に続き、参加者のディスカッションです。栄区内外でさまざまな活動をするみなさんから、たくさんの声をいただきました。

Aさん
鎌倉で市民活動をしています。
活動には、支援金や義援金が集まってきますが、常に寄付金はクリアにして活動をしています。
私どもの活動のなかには、熊本、そして福島という、ともに被災地となった地域の子どもたちに向けて、お城にちなんだアートを使った交流というものもあります。
国だけでなく かつての藩、今の県がそれぞれの支援をしていかないと、やっていけない時代だと考え、活動をしています。白木先生、ご意見をいただけると幸いです。

白木先生
すばらしい活動です。支援金が使途不明金とならないように、というのは大事なところですね。支援金のことでいうと、鎌倉てらこやは、毎年福島の子どもたちに対する支援を行っています。例えば、大学生による学習指導がそうですね。支援を受けた子どもたちは進学をしており、その(活動)報告をチャリティーコンサートで行っています、
その報告を行っています。

Kさん
とてもいい勉強をさせていただきました。2011年は、私も南三陸に入りました。
現地では人々の譲り合いや自衛隊の方々の素晴らしい活動を見ながら、私は私にできることをしていました。
私は、楽しめる募金箱「コロコロ募金箱」をつくり、名古屋に設置したんです。
パチンコのように楽しみながら募金ができるというものです。反応がよく、みなさんから募金をいただいていました。
いまは、リモート中心です。どうやって楽しみながら人と、そして活動でつながっていけるかを考えていく必要があります。助け合うすばらしさを育み、子どもたちが日本をかっこいいと思えるようにつなげていくのがわれわれのつとめだと感じました。

白木先生
いいですね。がんばっていきましょう。

輿石議員
市会議員は、地元の地域のためになることを行っていくべき立場と考えています。
地域外から参加の方には、栄区に、こんな会がある。大好きなこの町の話をしてほしいなと思っています。

来月はいつもの11日でなく6月12日(土)にさかえ横浜会議にかえてチャリティーコンサートをお届けします。みなさん、楽しみにしていてくださいね。

Sさん
参考になるお話をありがとうございました。
私は地域活動を30年ほどやっています。とにかく今は、協力しあってコロナをなんとかするのが課題と思っています。地域活動も、細心の注意を払って行っています。

Tさん
貴重なお話、風化させてはいけない話です。ありがとうございました。
当時は都内で12階にあったオフィスに勤務し、恐ろしい思いをしました。このことも語り継いでいくべきととらえています。

輿石議員
Tさん。、サッカーの指導をはじめ、人と人をつなぐなど、広く活動をされていますね。
こういった方がたくさん参加くださっていることをうれしく思います。

Sさん
勤務形態などから、現地支援にはいけない。だが、自分たちにできることを、という考えから、私の勤務先では、被災地の特産物を購入する形で、活動をしています。これも、支援の形のひとつです。

白木先生からは
「コロナ禍では、東日本大震災の経験が生かされているところもある。
だが、危機管理の点では、まだまだという部分が大きい。
そんなところから、今日のお話をさせていただきました」
というお言葉をいただきました。

そして最後に輿石市議
「東日本大震災では、さまざまな人がいろいろな知恵をしぼって、支援をしていましたよね。
被害の大きさをしっかり把握するとともに、忘れない。
そして、コロナのような事態が起こったときにも、こういったときのことを思い出して対応をしていく。そこで、違ってくる部分が必ずあると考えています」

正しく見つめ、私たちは判断をしていける
人とつながり生まれた波は、やがてビッグウエーブに
すべての発信は、さかえ横浜会議から!

(文/さかえ横浜会議運営スタッフ)

kabasawa

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