東日本大震災、そして911テロ。これらの出来事にちなんだ「11日」にこだわることで、大切なこと、心を揺さぶられることをテーマに回を重ねていく、それが「さかえ横浜会議」です。
さまざまなテーマを取り上げることにより、はじめて知ること、考えていく必要がある事がらを把握し、栄区を中心としたネットワークの広がりへとつながっています。
7月11日は、ウイグルで起こっている大きな問題についてお届けしました。
隣国に位置し、日本と近しいウイグル。
そこで起きていることは、他人ごとなのでしょうか?
今回あらためてお伝えするのは、ウイグルで実際にどんなことが起こっているのかを、広くみなさまに知っていただき、ご一緒に考えてみていただきたいと思ったからです。
当日ご参加いただいた方も、残念ながらご参加いただけなかったなかった方も、ぜひご一読ください。
当日は、開催のきっかけを作ってくださった、
「ウイグルを応援する全国地方議員の会」の逗子市会 丸山議員、
「日本ウイグル協会」のアフメットさん のお二方に最新の情報をお話いただきました。
まずは、今回のテーマとなったウイグルとはどんなところか、そして今起きている問題と実情について、アフメットさんのお話をご紹介します。
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ウイグルとは?
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アフメットさん:
イスラムの文化を持つ人々が暮らす土地ですが、近年中国人の人口が増え、それにともない先住のすばらしい文化は次々と奪われています。
伝統的な文化や生活習慣は排除され、反発、不安を抱き、摩擦衝突を繰り返しています。
4年前からはこの民族を力で排除する動きが活発になり、強硬なやり方で民族を滅ぼそうとしていることが露見しました。
また、中国の核や監視システムなど技術の実験場とも言われる、それがいまのウイグルです。
2021年に入り、大きく国際社会が動きました。
1月にアメリカ政府が「ウイグルの現状はひとつの民族を徹底的に滅ぼす行為「ジェノサイド」にあたる」という見解を認定し、責任追及すべきであると声をあげています。
また、カナダ、オランダ他 さまざまな国の議会もこの問題を取り上げ、認定に準ずる姿勢提示を行う国が現れ、次々と対策を呼び掛けて始めました。
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<歴史>
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消える人びと~ウイグルの実際~
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アフメットさん:
現在ウイグル内には、1,000か所以上もの強制収容所が存在します。
中には13万人もの人を収容できる大規模なところもあり、国連は「最低100万人のウイグル人が収容所内にいる」と推定しています(諸説あり、400万人とも500万人とも)。
いずれにしても収容人数の規模はかつてのナチスを超えています。
◎収容される人とは?
ウイグル人社会における著名な文化人、経済人が、この2~3年で次々と姿を消しています。そこには日本の大学で博士号を取得した人たちなど、日本で育った著名な知識人も含まれます。
では、収容されたたくさんの人々は、いったいどうなるのでしょうか?
中国が流すプロパガンダと、運よく収容所を逃れてきた人の証言はまるで違っています。
プロパガンダの主旨 ——–
人々に必要な教育を施す職業訓練の施設であり、教育終了後、人々は帰郷し、みな幸せに暮らしている。
(ただし当初は収容所の存在自体を否定しており、後にいくつかの告発により存在を認めた)
逃げてきた人たちの証言 ——–
1日中、自己否定を強制。
日常会話はウイグル語禁止、中国を称えなくてはならない。
手足は鎖でつながれる、薬を打たれ、性的暴行も。
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突然「学習に行く」と連れ去られ、そのまま帰ってこなかった人々が多くいます。
施設内で亡くなったケースでは、故人の遺体が身内に返されることはなく、拷問や人体実験など犯罪行為を隠すためとも、臓器ビジネス疑いがあるともみられています。
私(アフメットさん)をはじめ、いま日本にいるウイグル人の多くが、ずっと帰国できずにいるのが現実であり、現地に残した家族とは連絡がとれず、糾弾しようとすればその家族を人質に圧力をかけてくる。
世界のどこにいても、ウイグル人は中国から攻撃を受けているのです。
また、アメリカのシンクタンクによれば、ウイグル人女性には不妊手術が行われ、ウイグル人の子孫が増えないようにしているとのこと。中国は、不妊手術の事実は認めていますが、女性たち自身が希望して手術を受けていると伝えます。
男性は拘束され、女性は子どもを産めないようにする。
子どもは施設で洗脳教育をされ、中国人として育てられているのが現実です。
日本ウイグル協会のホームページ(https://uyghur-j.org/japan/)には、こういった方たちのインタビューが掲載されています。
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内部文書の流出で露見したこと
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アフメットさん:
2019年以降 3回にわたり収容所に関する内部文書が流出しました。
収容対象者の名前や収容の理由、家族関係などが詳細に書かれているものです。
そもそも、なぜこういったデータが存在するのか。
その理由は、中国がウイグル人の行動の一挙一投足を24時間監視し、信用できないと判断した人を収容するという施策をとっているからです。
信用できない人とは「外国渡航歴がある」「パスポートを持っている」なども含まれ、収容の必要性は人間でなくAIに判断させています。
この内部文書が明るみとなったことで、欧米をはじめ、世界中が大きく態度を変えたのでした。
現在も、ウイグル国外にいるウイグルの人々は家族と連絡を取ることができない状態が続いていますが、それに対して中国は「教育プログラムは終え、みな幸せにしている」と回答するのみです。
身内などが「連れて行かれた家族が帰されていない」とインターネット上でアピールしても、その主張は中国当局によって削除され、訴えた人の安否はわからなくなる状況が繰り返されています。
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質疑応答・ディスカッション
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後半は、講演中によせられたたくさんの質問にお答えいただきました。
■日本人にできること 地方議員にできることはなんですか?
丸山議員:
主に次の4つです。
・ウイグルの証言集会を開き、生の声を届ける活動をする
・学校や図書館に、惨状を伝える書籍を寄贈する
・議会への意見書の提出、ジェノサイド非難決議を地方議会から声をあげる
・街頭活動の応援
■なぜ中国共産党はウイグルを迫害するのですか?
アフメットさん:
チベットやモンゴルを含め、独自の文化を維持し人口も多く「自分たちは中国人ではない」と考える人がい続けることを問題視するからです。70年もの間、中国はウイグルを同化させようと干渉を続けていますが、うまく進みませんでした。
露骨なことをして同化を急ぐ理由のひとつは「一帯一路」です。
大規模な国家プロジェクトで、ウイグルに関わるものがいくつもあるのが理由といえるでしょう。
ウイグルの独自性を消せば中国一色になると唱える学者もおり、しかし強硬的に進めると反発が出るので反発しそうな人は先に閉じ込めてしまえ、女性は不妊手術で子孫が増えないようにしてしまえ、男性は捕らえてしまえ、ということを続けています。
ウイグル問題ほど、中国が国際社会から叩かれたことはかつてなかったと言えるでしょう。
漏れてしまったわずかな情報だけでも反響が大きかった。これほど広く国際社会にバレてしまうとは思っていなかったはずです。
事実を隠し、国連にも伝えない。取材も受け入れず、プロパガンダだけを流す。それが中国の対応です。
■中国は、習近平政権になってから、迫害は加速したととらえてよいでしょうか?
アフメットさん:
はい、その通りです。
■世界のイスラム教徒から、声はあがっているのしょうか?
アフメットさん:
あがっていません。
そもそもウイグルで起きていることが、イスラム社会に正しく伝わっているのかすらもわかりません。
またウイグルの問題を国家で認定しているのはアメリカですが、反米感情の根強い中東イスラム諸国は、アメリカが重要視していることに対してアンチの姿勢をとる傾向があります。
日本のみなさんは、同じイスラムなのに…と考えるかもしれませんが、中東のイスラムとウイグルのイスラムは、また違うんです。
ただ、私たちが力を入れて伝えていけば、状況は変わると思っています。
■地政学的に重要でなければ、ジェノサイドは起こらなかったという仮定はできますか?
アフメットさん:
一帯一路というよりは、膨大な地下資源がポイントでしょう。
中国全体のエネルギーのうち、石油と天然ガスのほぼ 1/3 を算出しているのはウイグルです。
綿花、太陽光パネル素材なども含め、世界規模で大きなシェアを占めるエネルギー源がウイグルにある。ゆえに中国は、その上に生きる思い通りにならない人たちが邪魔なのです。地下資源がなかったら、いまの状況までにはなってなかったかもしれませんね。
■いま世界ではウイグル搾取企業に対する不買運動などがおきていますが、それについてはどう思われますか?
アフメットさん:
不買運動をすればウイグル人の就職が一部影響を受けるんじゃないかと語る学者もいまますが、それを気にしていると 多くの人々が捉えられ続ける現状を許すことにつながります。
確かに一部は影響を受けるかもしれませんが、企業のちょっとした不祥事・クレームなどというレベルの話題ではないので、しっかりと考えて行動してほしいです。
強制収容所の近くには、必ず工場が隣接しています。中国が国際社会に向けて「家に帰った」と伝えた人々は、実際は居場所を収容所から隣の工場へ移されただけであり、そこでずっと働かされています。
この事実に、実はいま世界中の企業が関わっています。
工場に寝泊まりして働き続け、そこで作られた(生産・製造)ものでビジネスをしている企業は、世界に山ほどあるでしょう。
中国のプロパガンダには、豊かな人が登場し「この職があったから生活できている」と語りますが、それはごく一部のことです。かつてビジネスで成功をした人も含めた大多数のウイグル人は、意思にそぐわない形で労働させられています。
まずこの状態をなくすことが重要だという視点から考える必要があるのではないでしょうか。
企業の方々には、多くのウイグル人が強制労働をし、流した汗でつくられたもので商売をしていいものか、そこを考えてほしいです。
実態が明らかになる時代がきます。
とくに企業は 奴隷労働でつくられたもので商売していたことを非難される状況になりかねないでしょう。
この問題は「奴隷労働を強いられる人の人権」という視線で語るべきです。
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◎ディスカッションを終えて
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大きな話をしている一方で、個人の考え方などに深く根差す部分もあり、本当に考えさせられる話でした。
人ひとりの命と存在、そしてその思考は、他者に制されるべきものではありません。
いまウイグルで起きていることは、他人ごとでしょうか?
私は、そうは思いません。
真実を見極める目を持ちましょう。
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(文/さかえ横浜会議運営スタッフ)